「ボランティア」が乱舞するネット界隈
Twitterでもはてなブログでも、もうすっかり話題ですね。新規発足の「コンピューターソフトウェア協会(CSAJ)」会長、荻原氏の放った言葉、「五輪に向けて、ボランティアで対応できるエンジニアが4万人必要だ」。
うん。すげぇ。
こんな感じで反論記事も出てますし、
Twtterに至っては、もう大喜利大会の様相を呈してます。
流行のネタで大喜利が始まるのは、Twitterの常ではありますが。
さらりと「オリンピックでは、ただ働きするエンジニアが4万人必要」と言いきった先の記事も、それはそれはすごいのですが。
『真意を聞く』方の記事には、さらにものすごい発言がありました。
サイバーディフェンスを担うエンジニアをただ働きで調達したい理由として、
メリットがないものに国は予算をつけない。
メリットがないものに国は予算をつけない。
メリットがないものに国は予算をつけない。
去来する、政権崩壊イメージ
このコメントを見たとき、私の脳内に広がったのは、このようなイメージでした。時は弘安四年夏。
博多の岸に築かれたるは、武骨も武骨の岩の塀。
固唾を飲んで見守るは、鎧に兜の騎馬の兵。
見よその沖を埋めたるは、無数に漂う敵が船。
やぁ船上より見つめるは、無双を誇る敵が兵。
ちょっとでも日本史を勉強した方なら知っていると思います。
鎌倉時代中期に発生した、日本最大の国難、元寇です。
https://ja.m.wikipedia.org/wiki/元寇
要するに
鎌倉時代、当時世界最強の元(ゲン。はだしじゃない方。モンゴル。)軍が日本に攻めてきた。
日本は二度攻められ、兵器技術の違いやら戦争作法の違いからかなり苦労したけれど、侍が超頑張ったことや相手の研究・対策をそれなりにやったこと、相手がわざわざ海を越えてきたせいでお得意の馬を活かしきれなかったことや都合良くやってきた台風なんかのおかげで、侵略されずに追っ払ったよ。
という戦いです。
そしてこの戦いが教科書で扱われるとき、次の行に書いてあるのが、こんな内容です。
辛くも元に勝利した日本であったが、この防衛戦争では、新たな土地を得られなかった。
戦争に動員した武将には「新たな土地」を与えて報いるのが当時の慣習であったのに対し、幕府には与える土地がなかったのである。
これにより御家人(侍のことだよ!)は疲弊し、鎌倉幕府の影響力は衰えていくのである。
当時の戦争は、敵からの分捕り品をもって報酬としてたから、何も分捕れない大規模な戦いというのは、相当まずかったようですね。
専守防衛なんて甘っちょろいことを言ってたら、即詰みます。
さすが800年前。ヤバーン。ヤバーイ。
お分かりいただけただろうか
荻原氏の- オリンピックに向け、大規模なサイバー攻撃が予想される
- これはもはや、サイバー戦争である
- サイバー戦争への備えはメリットがない
というのは、ただ身を守るだけの備えは、仮に機能したとしてもメリットではないという意味です。
いや。いや。
あなた、何百年前の人ですか。
現代の『戦争』と『軍備』
大前提を確認しましょう。今の世の中、相手国の土地が欲しいぜ、資源が欲しいぜ、分捕ってやるぜなんてアナウンスの元に始まる戦争なんて、あるわけがありません。
それは侵略というのです。
仮にそんな本音があっても、戦争を開始する側はオブラートに包む義務があります。
「我が国の主権が、相手国に脅かされている」とか。
「あの国は大量破壊兵器を所持しているから、制裁が必要だ」とか。
だから、大抵の軍隊は、「防衛」のために存在しているのです。
日本の自衛隊なんて、極端な例です。
あまりに「防衛目的」ばかり強調されるせいで、やばい状況で発砲する権利すら認められているのか怪しいくらいです。
同じ暴力装置でいえば、警察だってそうです。
彼らは、犯罪者から金銀財宝を分捕るのが仕事ではありません
さて。
彼らの活動にはメリットがないでしょうか。
敵から分捕れる物はないから、ただ働きすべきでしょうか。
この問いに「はい」と答える奴がいたら、「鎌倉時代にお帰りください」と言いたい。
つまり私は荻原氏に、「鎌倉時代にお帰りください」と言いたい。
「価値」の評価と「価値」への報酬
かつての日本の呑気さをあらわす言葉に「水と安全はタダの国」という物がありました。最近は、「安全がタダ」という感覚は、少しだけ薄れてきましたが。
今、日本のいろんなところで根深く残っていて問題化しているのは、「無形の労働力はタダである」という認識です。
工業製品なら、高額なのも分かる。
自動車なら、高額なのも分かる。
宝石なら、高額なのも分かる。
プログラミング?なんで高いの? キーボード叩いてるだけなんだから、原価なんてタダでしょ? 減るもんでもないし。
イラスト?なんで高いの? なんかパソコンでお絵かきするだけなんだから、原価なんてタダでしょ? 減るもんでもないし。
デザイン?なんで高いの? なんかちゃちゃっとやるだけなんだから、原価なんてタダでしょ? 減るもんでもないし。
「それ」をする人が生きていく原価や「それ」ができる人のスキルの価値が無視されるシーンが、あまりにも多い。
荻原氏は技術者はいつだって不足しているといいますが。
そりゃ、そうですよ。
業界トップ(?)が、「おまえらに報いる物なんて何もないぞ~」「霞を食って生きていけよ~」と宣伝している業界に人があふれたら、そんなものもはや怪奇現象ですって。
そろそろ、13世紀はやめましょうよ。
今はもう、とっくに21世紀ですよ。
(今井四郎)
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私が読んでた時より、何巻か増えてる……。