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ネットワークスペシャリストとセキュリティスペシャリストの保持者だけど、『ne0;lation』は許されていいと思う

少年ジャンプの新連載*1『ne0;lation』と、ツッコミ

どうも。「技術者です(キリッ」っと名乗ったら棒で殴られる系技術者の今井です。*2

先日、ネットワークスペシャリスト資格を取得した旨を記事にしました。

この前の週に、少年ジャンプでIT系の新連載が開始されていました。
原作:平尾友秀 作画:依田瑞稀による『ne0;lation(ネオレイション)』です。

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元不良の薬袋大悟(みないだいご)の前に現れた、「理系の不良」ことウィザード級クラッカー*3尾根新太(おねあらた)、自称ne0(ネオ)が、クラッキング技術を駆使して「悪いやつをいじめる」物語です。

第一話のクラッキングシーンをはじめ、技術的な描写は、ITに通じた人には噴飯物のシーンが多かったようです。

今回は、「それでも、『ne0;lation』は許されていいと思う」という記事です。

目次

ツッコミは妥当なのか

前述のtogetter記事では、『ne0;lation』のIT考証に文句のある人のツイートが並んでいました。
一応、仕事柄パソコンにも慣れていて、文系ながらセキュリティの高度区分資格も取得した身からすると、それらのツッコミには「せやな」って感じです。

専用ハードもなしのPCで「電波を測定」して「電話番号を特定」するのがおかしいというのも、「DNSサーバポートにマルウェア設置」の意味が分からん、というのも、妥当なツッコミだと思います。
私にクラッキング技術はありませんが、漫画で描写された方法でクラッキングはできまいなぁ、というのには合意します。

でも。それでも。
娯楽作品としての『ne0;lation』は、IT技術描写については許されていいと思うのです。

だって、せめて用語レベルくらいは、正しい*4言葉を使って、そこそこそれっぽい手順でクラッキング描写をしているんですから。

もっとひどい作品は、大作映画にもありふれているんですから!!

道をならしてきた「先人」たち

映画のIT描写なんて、大抵がひどいもんです。私が具体例を挙げられるだけでもこれだけありますし、実際はもっとひどいのが山ほどあるのでしょう。*5

ミッション:インポッシブル ゴースト・プロトコル

ミッション:インポッシブル/ゴースト・プロトコル [Blu-ray]

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核戦争を防ぐため、我らがスパイ、イーサン・ハントが活躍します。
登場する「暗号の専門家」は、「核発射の暗号」の書類を一目見ただけで「……本物だ」と断定します。暗号を知っていたのではなくて、「専門家だから、見れば分かる」という理屈で。

とりあえず、サイモン・シンの『暗号解読』を読んでこい!!

暗号解読〈上〉 (新潮文庫)

暗号解読〈上〉 (新潮文庫)

サマーウォーズ

サマーウォーズ

サマーウォーズ

AIにクラッキングされまくった仮想世界、仮想世界の影響であらされた現実世界を救うために、数学オリンピック候補生の高校生が奮闘します。 この子も、「提示された暗号」を「暗算」することで「解読」します。

とりあえず、サイモン・シンの『暗号解読』を読んでこい!!

暗号解読 下巻 (新潮文庫 シ 37-3)

暗号解読 下巻 (新潮文庫 シ 37-3)

どういうことかざっくり解説すると、現行のコンピュータセキュリティに使われている暗号は、「素数素数の掛け合わせ」によって暗号を成立させており、「計算の工夫」とかで「早く解く」ことはできないようになっているのです。
コンピュータでも「膨大な組み合わせを総当たり」することでしか正しい鍵にたどり着けない仕組みを導入することで、「(現実的な時間と労力では)破れない暗号」を実現しているわけです。

なので、「数学の才能がある人」程度が暗号をひと目見ただけで「正解の鍵」を「暗算」するのは不可能なのです。*6
もうちょっと分かった気になりたい人は、「長門有希の100冊」にもラインナップされた名著『暗号解読』を読みましょう。文系大学生にも楽しく読める読み物でした。

暗号解読―ロゼッタストーンから量子暗号まで

暗号解読―ロゼッタストーンから量子暗号まで

名探偵コナン ゼロの執行人

前述のミッション:インポッシブルも、サマーウォーズも、技術考証にはツッコミを入れつつも、エンタメ作品としては好きです。サマーウォーズBlu-rayも買いました。

しかし、このゴールデンウィークに、「あまりにも技術考証がひどすぎて、物語がまるで楽しめない」例にぶち当たってしまいました。

名探偵コナン ゼロの執行人』です。

人工衛星を、超ドライビングテクニックとサッカーボールで撃墜する流れはおいといて。*7

IoTテロ is 何?

IoT機器のルート権限を取ったところで、「爆発・炎上」するレベルの過剰な電流を流す事ができるイメージはわきませんし、犯人がいちいち対象機器を指定したにしてはあまりにも多岐に渡る機器が爆発・炎上しているし、無差別の一律攻撃を実施したにしては爆発・炎上する機器が限定的だし。

技術考証については、「うわ、ひでぇ」と思いました。
あれ、説得力なかったですよね? 実は相当な説得力がある考証だった、今井の知識が浅いだけとか、ないですよね?

個人的に「いやいやいや」と思った点はもう一つあり*8、「犯罪に関する調書(でしたっけ?)が、手口を詳細に記載しており、それさえ見れば犯罪を模倣できた」という流れには、ぽかーんとしていました。

私たちが、どれだけ苦労して手順書を作ってると思ってるんだ!!
手順書に貼られたスクショと違う画面に遷移しちゃっただけで、専門家(笑)の私は、どうすればいいか分からずオロオロするんだぞ!!
素人が、聞き込みの結果だけで専門的な操作を完全に理解できてたまるものか!!

もう、「安室の女~」とか「『執行』されてきた~」とか言ってる場合じゃないですよ。
この作品は、楽しめませんでした。

ね? 『ne0;lation』はかわいいもんでしょう?

そんな訳で、各種のIT考証がめちゃくちゃな「大作」が世に溢れている以上、『ne0;lation』程度の高水準でハッタリを利かせた作品は、充分許されるじゃないか、というのが私のスタンスです。

IT描写以外の感想

IT描写以外にも、ツッコミを受けてるところや良いところがありますね。それらについては、まぁ、特段弁護する気もないので、好きにツッコんだり褒めたりすればいいと思います。*9

偽悪的ヒーローは流行らない

『ne0;lation』第一話では、借金取りに土下座する大悟を踏みつけるネオの描写が、悪い意味で話題になりました。

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「人気者」を主人公に据えることが多い今の世の中、「悪者」「偽悪的」な主人公はリスキーだな、と思いましたね。

偽悪的な主人公というと、『ブラック・ジャック』とか『明稜帝梧桐勢十郎』あたりが思いつきますが、これらの主人公が「実は良いやつ」描写を欠かさなかったのに対して、ネオは割と素がクズで、主人公達とは利害が一致しているだけなんじゃないかな、という感じがします。

明稜帝梧桐勢十郎 (1) (ジャンプ・コミックス)

明稜帝梧桐勢十郎 (1) (ジャンプ・コミックス)

今後、ネオの人物描写はどうなっていくのでしょう?

「文系の不良」は出ないの?

これはいいとか悪いとかじゃなく、私の読みが当たらなかったのかな、というだけの話なのですが。

一話で、ネオは自身を「理系の不良」と称し、大悟のことを「体育会系不良」と称しました。

ということは当然、「文系の不良」として、法に精通したインテリやくざキャラが登場するのだろうと思っていたのですが、今のところその気配はないようです。
読みが外れました。残念。

作画の一部が特に素晴らしい

最後に、この作品の重要な魅力を訴えておきたいと思います。

女性キャラの作画、の、お尻と太ももの描写が素晴らしい。
とても魅力的です。

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ほら。

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ほら。

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このシーン、さりげなくもとんでもない度合いで胸が露出している描写ですが、それよりも前の2つの描写の方が、はるかに魅力的に感じます。
ここは大きな武器だと思うので、興味がない人が引かない程度に活かして欲しいと思います。

まとめ

  • 『ne0;lation』への批判意見は、いろいろと分かる。
  • エンタメ作品として見た場合、IT描写のトンデモ具合は、まったくたいしたことはない。目をつぶって言いレベル。
  • 劇場版コナン最新作のIT描写はすさまじかった。
  • 『ne0;lation』は、作画が武器になるかもしれない。

今井士郎は『ne0;lation』を、ちょっぴり応援しています。
(今井士郎)

ネオサイタマの誇るヤバイ級ハッカー

*1:もう第4回ですけど

*2:マクロには入門しました。(キリッ

*3:クラッカーとは、IT技術を駆使する犯罪者のこと。ハッカーIT技術に卓越した人の事なので、クラッカーとは「悪いハッカー」。

*4:実際のIT用語である、くらいの意味です。クラッキングの手順として、あのタイミングで登場するのが妥当、という意図ではありません。

*5:そういえばスターウォーズの『ローグワン』も、施設入館時のセキュリティ管理や情報アクセスの権限管理がひどかったなぁ。

*6:もしも、私の解説に誤りがある場合は、こそっと教えてください。

*7:あのシーンについても、リアリティレベルの理解が大混乱しましたが。

*8:数えれば、他にいくらでもありそうですけど。

*9:IT描写だって、好きにツッコんでもらって良いんですけど。