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『ガールズ&パンツァー劇場版』テレビ版がイマイチだった私でもサイコーに興奮した、3つの理由【ネタバレ回避版】


ガルパンはいいぞ
(今井士郎)



すいません。ここで終わりじゃないです。きちんと続き書きます。
ガールズ&パンツァー(ガルパン)劇場版』を観て参りました。

女子高生たちがきゃっきゃうふふしながら「戦車道」なるスポーツで戦うアニメの劇場版です。
第二次大戦で使われた戦車をものすごいクオリティで描写し、うまいこと当時の各軍(独・英・米・ソあたり)の役割を各チーム(学校)に割り当てて、ミリオタ歓喜、萌え好き歓喜、地元(茨城県大洗市が舞台)も歓喜と、いろんな方面をうならせた作品です。

私は正直テレビ版があまりいいと思わなかった人間なのですが、あまりにもTwitterが騒がしいので、この目でクオリティを確認するかと、冬休み初日に観てきたのです。

総評

文句なしの星五つでした。
個人的には、ジュラシック・ワールドより、スターウォーズよりさらに楽しめました。
そのくらいの傑作だとおもいます。
劇場を出てから10分ほどにやけた顔が元に戻らず、ときおり「うふふふふふ」と笑い出してしまう症状がしばらく続きました。
そのくらい快感をもたらしてくれる作品だったのです。

ここまでで観に行く気になった方は、続きを読まないことをオススメします。
いわゆる『ネタバレ』をする気はさらさらないのですが、「どう、おもしろいと思ったか」というのも、多少は鑑賞に影響のある情報です。
どうせ観ると決めている未鑑賞者は、余計な情報を入れず、四の五の言わず観てくればいいのです。

「あらすじ」レベルの前情報すらなく観たことが『スターウォーズ』『ガルパン』の楽しさを押し上げてくれた確信があります。
もう一度言います
どうせ観るなら、この記事すら読まずに観ることをオススメします。
そうは言われても多少の情報がないと、貴重な1,800円も2時間も使えない、という、正常な批判精神をお持ちの方は、以下を読んで観に行くかの参考にしてください。
テレビ版がイマイチだと思った私が、映画版には感動した理由を列挙します。

前提 ~テレビ鑑賞時点でも気に入っていたこと~

  • 戦車がかっこいい
  • キャラが可愛い

という点は、テレビ版視聴時点でもある程度認めていました。
キャラデザイン的には、ノンナ(プラウダ高校:ソ連を模した高校の副官)が好きですね。
声優の上坂すみれさんが、異様に流暢なロシア語の演技をしていたのも、感心するやら聞きほれるやら。
ただ、主に後述するリアリティレベルの捉え方を作品に合わせることができず、最後まで楽しみきれなかったのだと感じています。

楽しめた理由1 ~リアリティレベルは調整済み~

私が感想記事を書くと、そこそこ頻出する言葉に「リアリティレベル」というのがあります。
ストレートに訳せば、その世界がどの程度現実に近いのか、という意味です。
ちょっと解釈を広げれば、その世界の法則、「お約束」はどうなっているのかということです。

分かりやすい例を挙げましょう。
ドラゴンボール

当初、あの作品はギャグテイストの強いものでした。
亀仙人頭を銃弾が貫通しても死なない上に、次のコマでは治っているような世界でした。

そんな描写を見たときに「ああ、ギャグシーンだから、こんな大怪我をしてもストーリー上は大したことないんだな」と無意識に判断しているから、そのシーンを違和感なく楽しめます。
このとき「なんだ!? 明らかに脳を銃弾が貫通しているのに、なぜこのキャラクターは生きているんだ!?」と引っかかってしまうと、楽しむどころではありません。

「そこは気にしなくていいんだよ」「むしろ、気にしちゃあかんよ」という箇所が、受け手と作り手でずれていると、受け手にとってのストレスになります。

テレビ版の時はね、引っかかってたんですよ。

  • あっさり全国大会優勝しちゃったよ!?
  • 実績も戦力もない主人公チームが、「強豪」を破って!?
  • ある程度のご都合主義はいいけど、この子たち特訓も工夫も、ほとんどしてないよ!?
  • というか、「強豪校」も、「私たちは強い」と鼻にかけるばかりで、アスリートっぽい競技への愛着とか健全なプライドとかが見えないんですけど!?
  • 「強豪」って、本当に優秀なの?

この作品はよく「スポ根的作品でもある」と説明されたりするのですが、スポーツ根性的作品ではないよなぁ、と、独り戸惑っていました。

しかし、劇場版鑑賞時点での私は違います。
この作品は戦車がドンパチやってて、女の子が可愛くて、ミリタリーあるあるも詰まっていることに意義があるのであって、勝つことへの説得力とか学校の全権が生徒会長という一生徒に持たされていること物理的に戦車があんな挙動をできるのかなんて、気にしちゃいけないんだという認識が、鑑賞開始時点で完了していました。
そして、そこらへんの説得力はテレビ版に比べてちょびっと上がっているくらいなので、これらの問題が鑑賞を妨げることはなかったのでした。

チハタンの女の子(リーダーのデザインはすごく好み)たちの行動が、ちょっと頭がおかしいレベルでアホでも「うん、これはこういう作品なんだから」と寛大な心で受け止めた上で「てめぇら引っ込め」と念じる程度で済みました。

楽しめた理由2 ~キャラへの思い入れ~

この作品、キャラが多いです。
主人公の学校チームも、戦車ごとの複数チームに分かれています。
Wikipediaで数えたところ、
5 + 3 + 4 + 4 + 6 + 3 + 4 + 3 = 8両32名!!
けいおん!』の6.4倍です!それに加えて当然、ライバルチームたちにもキャラがいます。
ひええ。

テレビ版では、各キャラクターの描写の尺が限られていました。
そのため、気になったキャラクターがいても、積極的に「好き」や「嫌い」を感じるほど、印象が深まらなかったところがあります。

劇場版は、その続きをやってくれるのです。

キャラクターへの感情は、以下のような流れを辿ります。
A.知らない → B.キャラとして認識 → C.好き・嫌い → D.感情移入・応援

テレビ版のキャラ印象は、Aで始まりBやCで終わりました。
(主人公チーム以外のキャラについて)
映画版は、BやCで始めることができるというアドバンテージ。
仮に同じ程度の描写だったとしても、より可愛く見えるというものです。

特に、ウサギさんチーム(1年生ズ)とアリクイさんチーム(実際に戦車を動かしたくなった戦車ゲーマー)の成長には、ほろっとしました。

ウサギさんチームなんて、当初の描写はひどかったのに。
「こいつらなにやってるんだ、弱いなら弱いなりに真面目にやれよ」とすごく腹が立ったのに。
競技が始まってから、戦車を置いて逃げ出すとか、ああああ!!(怒)
と思っていた子達が、すっかり歴戦の戦士(いや、「選手」か)になってとか。

アリクイさんチームも実際の戦車を動かしてみたら、筋力不足でレバー1つ動かせないというテレビ版の反省を踏まえて、ことあるごとにトレーニングしてるし。
気づいたら、あらゆる操作を軽々こなすようになってるし。
お嬢ちゃん、頑張ったんやなぁ……と感心してしまいました。

他チームの行動を改めてみていたら、お友達になりたい、おつきあいしたいのは、サンダース付属のチームリーダー、ケイですね。
あの子、分かりやすくいい子だ。やっぱり。

楽しめた理由3 ~音と映像の迫力~

……と、いろいろ語ってきましたが。
ここまでは全体の魅力の3割です。

魅力の大半は、「音と映像の迫力」です。
これに尽きます。
なので、テレビ版を知らなくても、「女の子がキャイキャイ」に拒否感さえないのであれば、充分に楽しめるのです。この作品は。

どういうことかというと。
尺の2/3が、戦車戦なのです。

爆発音が、戦車の駆動音が、砲声が、ドカンドカンキュインキュインと、常に響いているのです。
そして、戦車の装甲に叩きつける砲弾の音も。
映画館クオリティで。

自分の上(カメラの上)を、戦車が通りすぎていくのです。
砲塔が、まっすぐにこちらを狙うのです。
近距離を、砲弾が掠めていくのです。
そして、砲弾が、命中するのです。
大スクリーンで。

この作品、女の子の描写は、魅力的な箸休めにすぎません。
爆発を、戦闘を、登場人物は誰も死なないというストレスフリーな状況で、目一杯楽しむことができる作品なのです。

「次の瞬間、あのキャラクターが死ぬのではないか」
「戦車道」という設定が、このストレスから鑑賞者を解放してくれます。

野蛮な爆発を見てスッキリしたいが、殺伐としたストーリーには耐えられそうにない。
そんな疲れた現代人にぴったりの映画。
それが、『ガールズ&パンツァー劇場版』なのです。

最後に一言

ガルパンはいいぞ
(今井士郎)