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「脱社畜サロン」が話題沸騰
元ブロガー・元仮想通貨布教者・現高知在住のイケダハヤト氏が、「脱社畜サロン」を立ち上げていたそうです。その運営のパートナーである正田圭氏の経歴について、「えらいてんちょう」氏が下記の記事で疑義を申し立てました。
曰く、「正田氏は2~3桁億円規模のM&Aを成功に導いてきたと言うが、その規模のM&Aは非常に珍しい。その数少ないケースに正田氏が関わってきたのならば、自分(えらいてんちょう氏)は関係者の証言を得られる立場にいる。しかし、そのような関係者から正田氏の名前は聞き取れなかった。正田氏の経歴は、詐称なのでは?」とのことでした。
この記事を受けて、脱社畜サロンのメンバーであった「いしかわ」氏がサロンのあり方に疑問を感じたそうです。
顛末は、いしかわ氏の下記の記事に書かれています。
要約すると、下記のような感じです。
いしかわ氏「正田氏の経歴が怪しいという訴えがあった。私は正田氏のこともサロンも信じたいので、経歴が信用できるという根拠を示して欲しい」
イケダ氏「彼が信頼できるのは、疑う理由がないからです。わたしは仕事をするときに、相手を疑いません。怪しい人とは仕事をしませんから」イケダ氏「こんな質問をしてくるということは、彼は荒らしでアンチだ。金はもらってるがもう客じゃない。サロンから追放する。」
……へ……?
「私は、日本有数の実績を持つ優秀なビジネスマンです」という言明を、なんの根拠もなく「それは凄い! ならば是非私のお金で仕事をしてください! そしてパートナーになってください!」と信用し、「みんな! 彼は凄いビジネスマンなんですよ!」と吹聴するというのは、かなりヤバい感性です。
「疑う理由がないから」という理由でバイクの燃費が50%アップするステッカーとかマンションの水道管の錆を、半自動的に取り除いてくれる輪っかとか買わされてないでしょうか。心配です。
消耗しない高知のおうちはマンションじゃないから、大丈夫ですかね。
【参考:「水道管の輪っか」を買ってしまったマンション被害者の漫画】
「人を疑わない」というコメントは、「ビジネスノウハウを伝達する人」としてのイケダハヤト氏の致命的な欠陥を示しているのに、お気付きでしょうか?
能力があるとしたら不誠実・ないとしたら無能
イケハヤ氏に、人の目利きの力は「ある」のか「ない」のか
まず、脱社畜して「会社の看板」「会社の庇護」「会社という保険」がない状態でビジネスをするのであれば、ビジネスパートナーの選定が大事なのは自明です。
無能をパートナーにしても、不誠実な相手をパートナーにしても、ビジネスにはマイナスです。「誰を仲間にしようとも、自分の才覚でビジネスを成功させることができる」なんて剛の者も世にはいるでしょうが、そんな人はビジネスを「教わる」必要なんてありません。
取引相手の「目利き」は、個人でビジネスするなら必須の能力なのです。 さて、イケハヤ氏は、「取引相手の目利きなんてしていない」と明言しました。ここで、イケハヤ氏について二つの可能性が生じます。
- 本当に人の目利きなんてしていなくて、ビジネスパートナーを選定する能力がない可能性
- 本当は目利きの能力があり、ビジネスパートナーを適切に選定している可能性
前者であり、「人の目利きなんて必要ない」と言っているのであれば、ビジネスノウハウを教える人間として無能です。
では後者であるとしたら、問題ないのでしょうか?
……残念ながら、前述のコメントと組み合わせれば、ビジネスノウハウを教える人としては問題だらけと言わざるを得ません。
形式知か暗黙知か
知識やノウハウには、「形式知」と呼ばれるものと「暗黙知」と呼ばれる物があります。
前者は「説明可能な、言葉に落とされた知識、ノウハウ」、後者は「たしかにあるが、言語では説明不可能なノウハウ」です。
イケハヤ氏が人の目利きの能力を持っているとしたら、どちらなのでしょうか。
暗黙知の形で持っているならば、彼は「ビジネスの超重要ノウハウについてすら、暗黙知を言語化できない程度の言語能力」しか持っていないということです。暗黙知は「言葉で伝達」できませんから、サロンで会話していても「教える」ことはできません。
形式知の形で持っているならば、彼は「持っているビジネスノウハウを*1、ビジネスノウハウを提供するとして集客しているサロンの生徒にも黙っている、極めて不誠実な人物」ということになります。
図にすると、こういうことです。
指導者として無能、とにかく無能、教える気がない不誠実。
さて、彼はどれなのでしょうか。
真実は、私にはわかりません。
いずれにしても、ろくなもんじゃないのは確かです。
そもそも、イケハヤ氏の「教える人」としての実績は?
イケハヤ氏の「教え」の数々
ここで、正田氏の実績ではなく、イケハヤ氏の実績を考えてみましょう。彼は、「ぼくの言うようにするのが得だ。そうしない奴はバカ。さぁ、ぼくを見習って○○してごらんよ」という形で、いろいろなものを勧めてきました。
勧めることで、「イケハヤ氏本人が」潤ってきたのは、本当なんじゃないかなと思っています。ですが、イケハヤ氏の「教え」によって「幸せになった生徒」はいるのでしょうか。
私が思いつく限りで、彼はこんな事をネットで勧めてきました。
- 東京から地方移住。「地方都市」ではなく「ド田舎」へ
- 会社をやめてブロガーになる
- 仮想通貨に投資する
- ブログじゃなくて、今後はnoteだ
さて、「彼の指導者としての実績」は、どうなのでしょうか。
教えの「成功」を仮定義してみる
彼が指導者として「成功」しているか検証するために、「成功」の定義を仮置きしてみましょう。
別に、「これこそが『成功』だ」「こうなれば人生は充分」「こうならない人生はゴミ」と主張したい訳ではありません。一定の定義をしないと、「彼の指導は『成功』したか」を論じることができないのです。
年収は、600万円確保する
お金は、大事です。
お金が不十分な生活は大変ですし、お金はこの上なく分かりやすい指標です。「ブログで稼ぐ」「仮想通貨で稼ぐ」というのはお金儲けの手法ですから、「お金には価値がある」点は、イケハヤ氏も認めているはずです。
さて、彼は「社畜」よりも「自分の教えに従った」方が幸せになれると主張します。なので、「社畜」と同等レベルのお金の余裕が生まれそうな数値として、年収600万円を設定してみました。
平均的な「社畜」の年収が400万円と想定し、「会社の福利厚生がない負担」「会社員生活より不安定であるリスクプレミアム」を考えたら、最低でもこの程度は必要であろう、という想定です。本当は、自営業ならもっと稼いでいないと危険な気がします。かなり甘めに設定しました。
年間で「生徒の1%」が、上記を達成する
「指導」を信じて仕事を辞めるようなリスクを犯すのであれば、本当は「『教えの通り』に行動できたら、100%成功する」であって欲しいところです。しかし、いくら指導者が有能でも、そこまで要求するのは酷でしょう。
ここは要求をがくーっと下げて、「言うとおりに行動した人の10%が成功する」に設定してみます。
そして、ノウハウを提示されても、動く人はマレです。
「イケハヤ氏の生徒になった」程度の行動力を示す人の中で、「言うとおりに行動できる人」は、10%と設定してみました。
そうすると、「イケハヤ氏の生徒」のうち「行動して」「成功する」べき人は、生徒全体の1%と設定できます。
「行動しても結果が出ない」人が多いならノウハウの質が悪いですし、「行動する人が少ない」ならば、やはりノウハウの質が低い疑いがあります。
例えば、
「ぼくの言うとおり、1日20時間、365日連続で勉強すれば東大に合格できる」
「ぼくの生徒で東大に受かった人はいない。誰一人として、ぼくの言うことを実行しなかったからだ。ぼくのノウハウは正しいのに」
といったことが起きたとしたら、悪いのは生徒ではなくノウハウです。
「実行すれば確実に儲かる」「実行したのに効果が出なかったら返金」等をを謳うノウハウは、「そもそも実行が不可能である」可能性もあるので注意しましょう。
または「ろくな生徒を集客できないノウハウであった」ということかもしれませんね。
「まともな行動力や判断力がある人には、利用価値がないと見なされるノウハウ」ということです。
ノウハウが正しい場合に「どの程度の期間で成果が出るべきか」というのは定義が難しいのですが、収入を絶たれたりするリスクを考えると「1年ごとに」1%の生徒が成功すべき、と置きます。
さて、成功しているのか。
上記の「成功」の定義が正しいとすると、累積でどの程度の「成功」者を輩出していれば、「教えが成功」していると言えるでしょうか。
検索してみると、イケハヤ氏が「有料サロンの儲かり自慢」をしている記事として、2015年11月の記事*2がヒットしました。
当時で、250名の会員がいたそうです。
そして、「脱社畜サロン」は、2019年1月11日現在で、2,989名の参加者がいるそうです。
脱社畜サロンは「ヒット」しているサロンなのでしょうから、2015年当時に寄せて、平均「1,000人」の教え子がいたと置きます。
だとすると、3年で輩出すべき成功者は何人でしょうか。
1,000(人/年)×1%×3年=30人
「年収600万円」をクリアしている「イケハヤ氏の教え子」が、累計で30人いるでしょうか。
私が知っている例はゼロです。もちろん、私が知らないだけの可能性もあるので、知っている方は教えてください。
「30人」を満たしているとしても、「3年で30人しか成功しないサロンに、魅力を感じますか?」という問いは、大事にしたいところです。
「『成功』の指標として、○○の方が適切である」という主張がありましたら、こちらに寄せてもらえば検討します。「成功の定義なんて不可能だ、そんな無粋なことを言うのはおかしい」という意見とは、「議論」が不可能ですので無視します。
結論
- イケダハヤト氏は、ノウハウを教育する立場として著しく能力が低いか、教えるべきノウハウを顧客にも伏せる、不誠実な人間と言えます。
- イケダハヤト氏の教えによって、「成功」した人は寡聞にして知りません。
- 『脱社畜サロン』で「社畜にならずに、社畜より儲ける」ことは期待できないと考えるのが合理的です。
反論について
このような零細ブログに対して、イケハヤ氏陣営からの反論が来るとは考えにくいのですが、一応想定される反論に先行して反論しておきます。
無視する反論
「社畜のお前に何が分かるんだ」「これだからネット弁慶は」「こいつは人を信用できないのか」「外野からなに言ってるの」「こんなことに熱くなっちゃって」「友達いないだろう」「字が汚い」
→この手の人格否定は議論にならないので、相手をしません。
対応する反論
「形式知、暗黙知の有無に関するイケハヤ氏の評価が不適切である。暗黙知を形式知化できないのだとしても、○○という点でイケハヤ氏は誠実、有能と定義できるのである」
「『成功』の定義が不適切だ。○○を満たせば、充分に成功と言うことができ、イケハヤ氏はそれを達成している」
「成功数がゼロというのは、今井が知らないだけだ。○○という成功事例があり、今井の定義する『成功』は充分に達成されている」
→これらの反論が来たら、有益な議論になりそうなので、喜んで対応すると思います。
あ、趣味もある社畜なんで、対応するとしても空き時間になります。無制限には対応できないので、ご了承くださいね。
と言うわけで、今井としては、「脱社畜サロン」は応援できません。いしかわさんの活動は、楽しみにウォッチさせていただきます。
(今井士郎)
(2019/1/14追記)
アフィとして、下記の書籍を紹介していましたが、『脱社畜ブログ』の管理人でもある著者の日野瑛太郎氏は、『脱社畜サロン』とは無関係です。私は無関係と認識していたのですが、ご本人のブログで、『脱社畜ブログ』が風評被害を受けているというコメントがありましたので、当記事でも「無関係」である旨をご説明しておきます。
あ、「やりがい」とかいらないんで、とりあえず残業代ください。
- 作者: 日野瑛太郎
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ちなみに、冒頭で登場した「えらいてんちょう」さんの著作はこちら。
- 作者: えらいてんちょう
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