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『竜とそばかすの姫』に思いつく限りツッコむ

『竜とそばかすの姫』を見ました

先週末の話になりますが、『竜とそばかすの姫』を観てきました。

「竜とそばかすの姫」オリジナル・サウンドトラック

感想は

  • 歌唱は凄かった。音楽に敏感でない私が、各シーンで感心するくらいだから、とても良かったのでは?
  • 他は大体ダメだった。基本的には脚本がダメだった
  • 電脳空間のビジュアル面を評価する声もあるけれど、美女と野獣のオマージュが露骨すぎるし、『サマーウォーズ』のような楽しさを感じることもできなかった
  • 結果的に、脚本のダメさを感じていない歌唱シーンであるオープニングシーンが一番楽しいシーンだった

という感じです。

そんなわけで、今回は、『竜とそばかすの姫』の脚本に、思う存分ツッコむ記事です。
必ずしも有意義な批評*1を目指すものではなく、「そこは気にするところじゃないだろう」となるような点にも、遠慮なくツッコむ記事にします。

なので、「それは、作品が Not for you なだけだろう」という意見は受け付けません。
そんなことを言いたい人に、この記事は Not for you です。
一週間前の印象を元に書いており、記憶違いはあるかもしれないので、そういったご指摘は受け付けます。

また、記事の性格上ネタバレを多数含む内容となっていますので、ご了承ください。

さぁ、ツッコミを始めよう

鈴のオリジン:母親の自己犠牲

ドラマの重要なバックボーンになっているのは、ヒロインである鈴(すず)の母が、水害時に子供を助けて亡くなっていることです。
これにより、現実世界の鈴は、陰気な少女となり、歌声を失いました。

鈴の母の死には、世論として「心無い」言葉が多数投げつけられ、遺族を傷付けました。

でも私は、心情的には「心無い世論」側なんですよね。
遺族や死者を侮辱するのが問題だと思うだけで、「素人が、自分の命を度外視して、無理に助けに入るべきではなかった」と感じました。

現実にもフィクションにも、自己犠牲がやむを得ないシーンはあるでしょうし、私自身が自己犠牲のエピソードを見て、「感動」の涙を流すこともあるでしょう。
しかし、基本的に「自己犠牲」は「最後の手段」でないといけません。他者を助ける献身においては、自分の身の安全も極力確保しないといけません。

(かつて投稿した「自己犠牲の美学は薄れていった方がいいよね」というツイート)

すずのお母さん、ライフジャケットを装備して川に飛び込み、一つしかないライフジャケットを子供に譲り渡して溺れていったように思いました。
あれは、ちゃんと自分の命の大事さを勘定にいれた行動だったでしょうか。
視聴者の岡目八目とはいえ、「ライフジャケットは2着必要では? 余計に羽織るにせよ、抱え込むにせよ」とか、「命綱にできるロープはなかったのか?」くらいのことは思いつきました。

正体バラシシーンでも感じましたが、「これ以外に手はない」という判断に、「本当にそれ以外の手はないの?」と、脳内のデッドプールがツッコミを入れていましたよ。
f:id:shiroimai:20210801152720p:plain (『デッドプール:SAMURAI』第四話より)

限られた時間とはいえ、自分の命の大事さや、娘が遺されるリスクを鈴の母が精一杯考えたようには見えず、鈴の母は結局「鈴にトラウマを植え付けるだけのギミックとしての存在か」という感想でした。

この作品全体を通して、鈴や竜、加えてヒロちゃんくらいは、ある程度キャラが立っていますが、他のキャラは全て「キャラクターというよりギミック」と言うべき存在に感じます。

Uのデバイス、何なんだ

Uにアクセスするデバイス、正直恐いです。
システムへの情報送受信はスマホに依存しているとはいえ、両耳に付けたデバイスだけで使用者の五感全てに干渉し、使用者の全身の生体情報を読み取ります。

あれ、イヤホンのように見えるのは外側だけで、装着したら電極が全身に張り巡らされたりしてませんか?
これこそ、SF作品を見る上では目をつぶらないといけないポイントでしょうが、せっかくツッコミを入れているので、素直にツッコんでおきます。

もう一押し、SFガジェットとして説得力を高める説明が欲しかったです。

はじめてのU 不気味なU

鈴が初めて「U」に入ったとき、そばかすの付いた顔を「醜い」とするモブが多数いました。(よね?)
あのシーンも違和感がひどかったです。

人にどうこう言えるアバターか?

鈴がベルとしてUに初めて突入したシーン、モブアバターには人間体形のものがほとんどいませんでした。
人外体形や二頭身・三頭身キャラがほとんど。いや、そうはならんやろ、という割合でした。
そして、ゆるキャラのような可愛い見た目でもない。

よくもまぁあの程度のアバターを使いながら、ベルのアバターの外見に文句を言えますね。
しかも、Uにおけるアバターって、利用者が任意にデザインしたり着せ替えたりするものではなく、本人の生体情報とがっちり噛みあった、唯一無二のものなんですよね?*2

相手にも自分にも、Uにおける逃げ場はない
それを馬鹿にするって、「公衆の面前で、実名顔出しで誰かの外見的特徴を馬鹿にする」くらいリスキーな行為だと思うのです。

Uの治安、終わってる。

モブ、なにやってるの?

あのシーンのモブは、空中の道のようないくつかのレーンに密集して、同一方向同一スピードで流れていました。
あれ、何やってたんですかね?

考えてみると、Uの中でモブが日常的にやっていることって、ほぼ描写されていないんですよ。

  • 空中を川のように流れたり
  • 空中でライブを見てみたり
  • 空中で誰かに罵詈雑言を送ったり

あんなに建造物らしきオブジェクトがあるのに、全部空中で完結するの?
U、楽しくなくない?

サマーウォーズの「OZ」世界の方が、(文字通り)地に足が付いている分と冒頭の説明の分、「劇中世界の人にとっては、大事な空間なのだろうな」と受け止めやすかったです。

そして、竜が登場

ベルがセンセーショナルに人気になっていた箇所については、何も言いません。
物語の都合であるのは動かぬ事実でしょうが、まぁ、そんなこともあるのでしょう。「モブの主体性ないよね」ってツッコミには使えそうですが。

そして、ついに「竜」が登場します。

最初の混乱

ライブへの乱入者が「あいつは竜だ」と紹介されるにあたり、竜の外見的特徴として、「背中にアザがある」ことが語られます。
竜は服を着ています。背中は見えません。これから脱ぐのでしょうか。そして、沢山の人に裸の背中を見られた経験があるのでしょうか。

……脱ぎません。 でも、登場人物たちの会話からして、彼ら彼女らには、「竜のアザ」が見えているようです。

……えっ!? もしかして、竜の「アザ」って、マントに描かれた色とりどりかつ不規則な模様のことなの!?

いやいや、それは「アザ」とだけ言われても分からないですよ。
アザっていうのは普通、素肌にできる、単色のものです。マントに描かれた色とりどりの模様を「アザ」と言われても困ります。

アバターに描かれるああいう模様は、本人の外傷由来だ」という設定知識が、モブにはあったんですかね? 視聴者にはないですよ?

そして「醜い」

Uは他人の外見を気軽に馬鹿にできる空間じゃないだろう、というのは前述の通りです。

しかし、竜には「醜い」という声が浴びせられます。

「醜い」というのをモブが多用するのに、強い違和感がありました。
普通の日本人が他人や表現物の見た目を罵倒するのに使う単語は「かっこ悪い」「ダサい」「気持ち悪い」といったところでしょう。
「醜い」という第一声、どういうコミュニティから飛んできた?

罪状の説明はない

竜は、みんなからの嫌われ者であることが語られます。
取り押さえに回った正義の味方風集団に対しては、アバターを使用不可能にする程の凶悪な暴行を繰り返したようです。

しかし最後まで、「竜がいかにして、そこまで嫌われるに至ったか」の説明はありませんでした(よね?)

正義の味方、なんなんだ

罪状がよく分からない竜を追い回していることもあって、正義の味方風集団は、最初から最後まで「ただの権力馬鹿のチンピラ」にしか見えない流れでした。
本人なりの正義も見当たらなければ、正義っぽく見せるための欺瞞的努力も見当たらない。
登場人物として、魅力が皆無でした。

なんでここで人間型だけなの

Uへの初突入シーンではあそこまで人間型アバターがいなかったのに、ようやく登場した人間型アバターは、正義の味方風集団のものばかりでした。
いや、正義執行の格闘戦には、リアル体形の方が都合がいいのかもしれないですけど……。
私には、「雑にしか考えていないから、正義の味方風集団はみんな人型にしておいた」風にしか思えませんでした。

戦略の不存在がダサすぎる

正義の味方風集団は、竜を格闘で取り押さえようとします。しかし、秒殺されます。
複数人の集団が何度秒殺されようと、リーダーは突撃を命じます。

深刻なおバカです。

これがSEKIROやBlood Borneならいいんです。

自キャラが死ぬことは前提であって痛みではありませんし、繰り返し突撃することで、敵の弱点が看破できるかもしれませんから。
しかし、この戦いでの敗北は、個々人のアバター? データ? 全てが喪われるという、個々人には深刻なダメージを及ぼすものです。

生身の人間集団が丸腰でクマに遭遇したら、逃げる算段か武器を調達する算段をするでしょう。
攻撃しても、得るものはなく殺されるだけですから。 生身の人間集団が丸腰で、包丁を持った素人暴漢に遭遇したら、犠牲を覚悟でツッコむ選択肢もあるでしょう。
うまくいけば、取り押さえられるかもしれませんから。 竜と正義の味方集団の戦闘能力差は、クマと丸腰の人間の方に近いものです。

やられてもやられても突撃を命じるリーダーの様子に「このシーンは、天丼ギャグと見た方がいいのかなぁ、シリアスな演出に見えるんだけど」と、本気で困惑しました。

そもそも、攻撃手段がアンヴェール指輪と格闘しかないない相手に、竜が「逃げてくる」必要性を全く感じませんでした。
あの場でリーダーごと全滅させられない/させない理由が、本気で分かりませんでした。圧倒的だったじゃないですか。

竜に慈悲の心があるわけでも、戦闘を切り上げる動機があったわけでもありませんし。

馬鹿なシーンだなぁ、と思ってました。

正義のリーダー、やってることはクラッカーじゃないか

正義の味方のリーダー、山ほどのスポンサーロゴを見せびらかしながら「私には、管理者しかできないはずのアンヴェールを行う手段があるのだ」と指輪を使います。

ここで、「管理者から権限を委譲された」といった説明はありません(でしたよね?)。
文脈を統合すると、リーダーは独自技術でアカウント正体バレビームを作り出したということです。

システムの脆弱性を突くクラッキング行為じゃないですか。
考えるまでもなく、ごく普通に。

なんで、正義の味方として大っぴらに自慢してるんですか……??

スポンサーが迂闊すぎる

権力馬鹿チンピラ集団に対してスポンサードする、劇中の数多の企業は、モブと同じく倫理観とリスクコントロールが終わってるなと思いました。
クライマックスシーンで契約を剥がそうが、とっくに手遅れでしょ。
初登場時点から、あいつらの権力馬鹿チンピラムーヴは決定的だったんですから。

劇中の大衆の倫理観は終わってるので、普通に正義の味方集団に拍手喝采してたのかもしれませんけど。

竜との再会について

何が、そんなに気になったの?

鈴は竜の正体を気にして、探り始めます。
……なんで?

どういう感情によるものか、全然分かりませんでした。

ライブを台無しにされた恨みつらみのようなものではなく、どちらかと言えばポジティブな感情に由来した好奇心のようでしたが……なんで?

現実の人間は、説明の付かない行動をとったりもするでしょうが、フィクションの人間の行動には何らかの理由を感じさせてくれないと、見てて面白くないんですよ。

竜探しの流れにもツッコミどころはたくさんありそうですが、それらのシーンには思い入れがなさすぎるので割愛します。

城は結局、なんだったの?

竜は、厳重な欺瞞工作が施された立派な城で、AIアバターを侍らせて拠点としています。
……なんで?

Uの世界で建造物や土地、AIによるNPCといったものを入手するための手段は全く描写されなかったので、入手手段は謎です。

必要なものが金銭にせよ、自身で作りだす技術力*3にせよ、虐待被害者である竜は持っていなかったはずです。
竜は、アバター作成に際し「身体能力が引き出された」だけのキャラクターであるはずです。

城とNPCのくだりは結局、美女と野獣のオマージュシーンを不自然に放り込むためだけのものだったのではないでしょうか。

中からの手引きでしか到達できないと思われた城は、どういうわけか欺瞞工作があっさり破られて襲撃されますし。
城に襲い掛かる正義の味方風集団も、完全にガストンに率いられた暴徒ですし。

「なんで、電脳空間で火攻めのシーンを見なきゃいかんのだ」と、冷めた目で見ていましたよ。

リアル空間なら、「見えないように隠されている」空間でも、「しらみつぶしに探していけば見つかる」ことに納得もいくんです。
しかし、電脳空間で「何度も景色が切り替わってたどり着く」空間が、闇雲に探せば見つかるほど連続した空間だとは思わないじゃないですか。
全く別サーバにアクセスしてるのかと思いましたよ。「しらみつぶし」で見つかるんかい。
意味深なファンタジー風描写はなんだったんだよ……。

そして、ベルを抱えている程度で数人のチンピラ相手に不覚を取る竜。
お前の戦闘力はそんなものではなかったろう。
ベルを一時別の場所に置いて、瞬殺できないとおかしいよ……。

鈴のリアル人間関係について

鈴の周囲の人物、ヒロちゃん以外は全員舞台装置*4に感じました。

  • ルカちゃんの必要性
    • 顔がかわいい人気者
    • ベルの顔のモデル
    • しのぶ君がとられるという勘違いのシーケンスに活用
  • しのぶくんの必要性
    • 顔がいい人気者
    • イケメン人気者の幼馴染なので、トラブルの元になる
    • 全世界に顔を明かせと、鈴をけしかける
    • 取ってつけたような恋愛要素。鈴の竜に向ける感情がわからないから、しのぶくんとどうなりたいかも分からない
  • カミシンの必要性
    • あるのか……?
  • 合唱団のおばさま方の必要性
    • 竜探しをけしかける
    • 児童相談所から「48時間は動けない」的なコメントを引き出す

しのぶくんと合唱団のおばさんは、ベルの正体を知っていたわけですが、「知っている」という事実だけがポンと提示されて、「どう気付いたのか」「鈴のことを、いかに気遣っているのか」という点は視聴者に感じ取れないわけです。
これらのキャラに、魅力を感じませんでした。

もちろん、噂を立てて鈴をいじめそうになるモブにも、魅力は感じません。
いじめを始めそうになるのも鎮火されるのも一瞬で、群体生物か何かか、という感じでした。

いじめが始まりそうなとき、人間関係ネットワークを的確に把握して鎮火に動けるヒロちゃんと鈴*5陰キャの動きではないだろう……。

ベルバレのリスク

竜の正体判明後、竜と素顔同士でビデオ通話した鈴は、自身がベルであると竜に認めてもらえません。

虐待を受けている竜の中の人を助けるためには、情報が要る、切られた通話を復旧する必要がある。
そのためには、自身がベルであると信じてもらわないといけない。

……オーケー、鈴に見えている状況として、ここまでは受け入れましょう。

鈴がベルだと、U全体に明かすしかないというしのぶくん

しのぶくん。「全世界に顔バレするしかない」って、本当に他の可能性考えました?
竜について、ベルしかしらないはずの何かはないのか、とか、普通聞きますよね?

ここで、デッドプールのツッコミをもう一度。 f:id:shiroimai:20210801152720p:plain (『デッドプール:SAMURAI』第四話より)

ベルの正体がバレると、名声が終わるというヒロちゃん

ちーがーうーだーろー! ちがうだろー!!

全世界的有名人となったベルの正体が鈴だとバレて心配すべきは、ベルの名声の前に鈴の安全でしょう。

アバターとはいえ、人の外見に「醜い」と言ってはばからない倫理観が終わってる社会の人間が数億人単位で鈴の素顔を知ったら、ネット上の誹謗中傷は間違いなく無数に発生します。やれ汚い顔だの、やれ俺たちは、社会は騙されていただの。
そして、億単位の人間が鈴を知ったなら、数百人くらいはリアルで鈴にちょっかいをかけてくることも容易に想像できます。

まぁ、あの世界の倫理が終わっているのは脚本の要請からであって、ハッピーエンドという脚本の要請があれば、一転お上品な世界になる可能性が高いですが。

しのぶくんにせよヒロちゃんにせよ、身の安全を真っ先に心配してくれない友達たち、関係を考え直した方がいいんじゃないかと本気で思いました。

虐待判明からの流れ

本作の批判記事は、基本的に「虐待への対処の描写」に言及しています。
正直私は、後半シーンでは脚本への不満を極力無視するように心をスイッチしていたので、感情的にはそこまで不満を感じていませんでした。

「あははー、おっかしー」って感じですね。

とはいえ、おかしいとは感じていましたので振り返ってみます。

虐待動画が炎上しないのはおかしい

事実だという蓋然性が高い、リアルタイムの虐待・暴行動画が日本で出回ったら、関心を持たれないということはあり得ません。

純粋な正義感の持ち主から、悪を罰したくて仕方ない権力馬鹿チンピラの中の人のような人々、単なる野次馬まで、無数の人が集まるはずです。
キャラの外見からは国籍が分かりませんので、てっきり、虐待が起きているのは警察力が及ばない海外のどこかかと思いましたよ。
まさか筆者の生活圏付近とは思いませんでした。

48時間ルールの印象付けがおかしい

児童相談所の「48時間ルール」というのがあるんですね。
通報から48時間『以内に』状況を確認しなくてはならない、というルールですが、劇中の描写では、「48時間はなんら手出しができない」かのような印象でしたよ。

以下は厚労省の通知文書 https://www.mhlw.go.jp/content/000517278.pdf

もちろん、「48時間以内に対応する」と「48時間は対応できない」は全く話が違います。

鈴は夜に家を出て、高速バスと電車で翌日の昼間に目的地へたどり着いています。
ざっくり12時間~20時間というところでしょうか。
証拠動画まで提示できれば、児相も普通に動ける時間だったのではないでしょうか。

警察でいいんじゃないかな

暴行の証拠動画があるのです。
児相が48時間まるまる動けないのだとしても、110番通報でいいのではないでしょうか。
通報を受け付けてもらえたのだとしたら、即日急行してもらえますよ。

なんで! 一人で! 行かせるんだよ!

ビデオ通話の場に集まった人たちは、基本的に「鈴を助けたい」という人たちですよね?
屈強な男が暴行している現場に、友人や「娘のような子」が向かうというのに、全員が「止めないよ、頑張って」って、おかしいでしょう。

倫理観と思考能力が終わってるのは、モブだけじゃなかったか。

筆者は、鈴との喧嘩なら余裕で勝てる自信がありますが、あの虐待お父さんに勝てる自信が全く持てません。
しのぶくんも勝てないと思うけど、でも同行しましょうよ。
「好きな」子で「守りたい」子なんでしょう?

わけがわからないよ……。

怒涛のご都合展開

東京についてからは、怒涛のご都合主義展開です。

あたりまえですが、路地一本外れていたら、生身の人間同士は出会えません。
鈴は、遠くから見えたタワーマンションの角度を材料に、まさに目的のマンションに面した道路にたどり着きます。
四国からの情報支援はなさそうです。

虐待被害者の児童が、ふらふらと出歩いています。なんで?

虐待加害者は、鈴の一睨みで恐れ入って逃げ出します。
「ああ、説得力ある展開を作るのが面倒くさくなって、お父さんやっつけたな」と乾いた笑いを浮かべながら見ていました。

事件はそこで解決。もう、以降の出来事は語られません。
……え!?

そのあと、どうなるんだよ!

竜の中の人は、これまでも「助ける」という言葉を受け取っていました。
結果として助けてもらえなかったために、「助ける」という言葉を全く信じられていませんでした。

鈴は、彼らを引き取っていません。
鈴は、彼らを引き取ってくれる「味方」を見つけていません。
ということは、彼らは元の家に戻ったのか、児相に引き渡されたのでしょう。

これまでの「『助ける』は口先だけだった」主体の中に、児童相談所は入っていなかったのでしょうか。
完璧に近く隠ぺいされていたと思しき虐待に対して、誰が気付いて、「助ける」と言い、そして諦めていったのでしょうか。
(加害者お父さんに殺されていないだろうな……?)

行政はこれまでも無力だった可能性が多いにあり、「今回は大丈夫だった」と示してくれないと、視聴者は全く安心できないんですよ。
世界数億人に顔バレした鈴についても。

「えー……??」と困惑しながら、私は映画館を出たのでした。

終わりに

ここまで書いてきたとおり、『竜とそばかすの姫』は優れた作品とは思えない、というのが私の感想です。
しかし楽曲は、本当に素晴らしかったですよ。

脚本のアラに目をつぶれる方に、本作はオススメです。 もしも、本作の『脚本が』素晴らしいと評価する方がいるとしたら、その人とはあまり旨い酒は飲めそうにないな、と、生産的でないことを考えています。(今井士郎)

*1:「良い作品であるためには、この欠点を直すべきだ」という指摘。『ドラゴンボール』に「死人が生き返るのはおかしい」なんてツッコんでも、「ドラゴンボールの魅力はそこじゃないだろう」となりますから、有意義な批評ではないですよね。

*2:ベルの衣装を他人が提供したような言及もあったので、何がなにやら分かりませんが。「アザ」がマントに反映されるので、どこまでお着換え可能なのか、全然分かりません。

*3:イラスト能力やプログラミング能力?

*4:キャラクターの欲望や都合で動いていない、と感じられるキャラ。脚本の要請に従って、提示されていたキャラクターの都合が捻じ曲がった、と感じる。

*5:鈴も、自分の言葉で数人の説得を行っています。