Pixivで流行ったあのマンガが、なんと書籍化!!
今年の四月に、Pixivで公開されていたあるマンガが、8月に書籍化されました。「あるマンガ」というか、未だに全編無料で読めるんですけどね。
無償公開されたこの作品には、クリエイターの端くれとして、ものすごく楽しい思いをさせてもらっていました。
なので、買いました。
今回は、この作品の紹介です。
『映画大好きポンポさん』人間プラモ作
あらすじ
映画の都、ニャリウッド。うら若き敏腕(美少女)映画プロデューサー、ポンポさんは、とある新作オーディションの後で、謎の引っかかりを感じていた。
なぜか。
一人のイモ女優・ナタリーに対して湧いた謎のインスピレーションを、忘れられずにいたからだ。
彼女を呼び寄せたポンポさんは一作の脚本を書き上げ、自身の助手を監督に任命する。
新人女優、新米監督、重鎮俳優が織りなす、ポンポさんの新作『マエストロ』は、果たして成功するのか。
新米たちの行く末は……!?
波瀾万丈のストーリーは期待しちゃダメ
この作品の賛否両論のうち「否」の大部分を占めるのは、「なんの挫折も描かれていない」ということです。あらすじに書いたとおり、ポンポさんは敏腕映画プロデューサーで、その地位が作中で揺らぐことはありません。
新作に抜擢されるのは新米監督と新人女優ですが、彼らは「成長」する一方で、特段「壁」にぶつかって停滞する事はありません。
とんとん拍子で、「ニャカデミー賞」まで総ナメしてしまいます。
怖いくらいに順調ですし、それが「物語として成立していない」という評価をするのであれば、それはそれで正常な感性でしょう。
では、作品の魅力は?
しかし、この作品はウケました。書籍化する程度にはウケました。
なぜか。
私は、「祭りに参加する楽しさ」を提供してもらえたからではないかと感じています。
作品の実質的な主人公は、映画オタクにしてポンポさんの助手、『マイスター』で初の映画監督に抜擢される青年、ジーン君です。
なぜ彼がポンポさんの近くに置かれ、重用されたか。
その理由はひどい。
「ウチの若いスタッフの中で君が一番ダントツで……」
「目に光がなかったからよ!」
そして、それに続く一連のセリフが、作品を見たたくさんの「鬱屈したオタク創作者」を頷かせ、この作品のヒットにつながりました。*1
長いですが、引用します。
他の若い子はね……
みんなもう 目がキラキラしてたのよ
充実した学生生活
友人や恋人と共に光り輝く青春を謳歌してきましたっていう瑞々しいきれいな瞳だけど満たされた人間っていうのは
満たされているが故に
モノの考え方が浅くなるの
だって深く考えなくても今幸せだから幸福は創造の敵
彼らにクリエイターとしての資質無しそういう幸せな連中に比べてジーン君は
社会に居場所が無い人間特有の
追い詰められた目をしているのほめてるのよ
現実から逃げた人間は自分の中に自分だけの世界を作る
まさに創造的精神活動!心の中に蠢く社会と切り離された精神世界の広さと深さこそが
その人のクリエイターとしての潜在能力の大きさだと
私は確信しているの
この作品は、そういう「社会からいい感じに孤立し、創作に救いを求めた登場人物」であるジーンとナタリー*2が、創作の世界に還元する物語でもあるのです。
例えば、文化祭や体育祭。
もうちょっと踏み込めば、サークルや劇団の創作活動。
これまでの人生で「創作活動」に参加した経験のある人は多いと思います。
創作の最中って、「あれ? もしかして今作ってるこれ、面白いんじゃないか?」って瞬間があると思います。*3
映画『マイスター』の撮影が始まって以降で描かれるのは、そんな瞬間ばっかりです。
・ジーン君、センスいいんじゃないか?
・重鎮俳優のブラドック氏、演技も素の役柄もかっこよすぎるんじゃないか?
・ナタリーィィィィィィィ!!(一番いいシーンは、本家(書籍,電子書籍 or Pixiv)で!!)
ああ、きもちいい、きもちいい。
そして、クランクアップ(『撮影の』完了)しても、まだまだ祭りは終わらない。
ジーン君はキモチワルイ笑みを浮かべつつ、お祭りを楽しみ続ける……。
まとめ
そういう訳で、『映画大好きポンポさん』は、クリエイター気質やオタク気質のある人ほどヒットしやすい内容となっています。なにせ本編は公式で全部読めますから、気になった方は四の五の言わずに読みましょう。
書籍版の書き下ろしは、登場人物の好きな映画*4紹介ページですよー。
(お話の合間に、各キャラの好きな映画紹介が。巻末に、各キャラが映画についてポンポさんと語らうシーンが描かれています。私は殆ど知らない映画でした。なんかすんません)
僕がこの記事を書いて一番気に入っているのは……
「ポンポさん」が親指シフトで異様に打ちやすいってところですね。
(今井士郎)
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