Kindleストアでまとめ買いセール中の、超オススメ商品
amazonが提供する電子書籍プラットフォーム『Kindle』では、いつもなにかしらの本が安売りセール対象となっています。現在*1、非常にオススメのマンガ作品が安売り対象になっています。いつまでセール対象なのか分かりませんので、大急ぎで紹介させていただきます。
ご紹介するのは染屋カイコ『かみあり』(REXコミックス)です。
- 作者: 染屋カイコ
- メディア: Kindle版
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『かみあり』って、どんなマンガ?
最重要キーワード「神在月」から
『かみあり』は、「神在月(かみありづき)」を描いたマンガです。旧暦の10月を一般的に「神無月(かんなづき)」と言います。
なぜ「神」が「無い」月かというと、全国各地におわす八百万の神々が、出雲(島根県)で行われる「神々の会議」に参集するからです。*2
そのため、「神無月」の時期でも「神様がいる」とされる地域では、同じ月を「神在月」と呼ぶのです。
長野県の諏訪大社近辺も「神無月に神が留守にしない」土地であるとして、「神在月」を採用しているとのことですが、「神在月」の代表選手と言ったら、なんといっても神々の「集まる」地、出雲(島根県)でしょう。
『かみあり』は、そんな「集まった神々」と地元の女子中学生が繰り広げる、超常系日常コメディです。
JCはこうして、『神々』と出会う
この作品は、「大阪から島根に転校してきたばかりの女子中学生、千林幸子(サチ)*3が、なんかよくわからない幻覚(?)を見上げるシーン」で幕を開けます。(『かみあり』第一巻より)
そして、サチの同級生であり当作品のツッコミ・メガネ・不幸担当の女の子、岡屋絵美(おかやえみ・エミちゃん)に「神在月」のなんたるかを聞かされるのです。
(『かみあり』第一巻より)
なお、このお話の世界において、神在月の神々は普通の人にも、普通に見えます。町中を闊歩してます。それなら地元以外のメディアで取り上げられたりするだろうとか、そういう無粋なことを言っちゃいけません。
この世界の神在世界の情景は、「地元人には当たり前だが、地元人以外には知られていない」風景なのです。
『かみあり』お話の概要
それぞれのお話の基本は、こんな感じで構成されています。- サチが神様と出会う
- エミちゃんが巻き込まれる
- 神様の来歴(神話上の扱い、御利益等)が語られる
- 神様によるトラブルが起きる
- トラブルを解決する
- 時には、神様にちょっと助けてもらう
超常系日常マンガですから、トラブルと言うほどのトラブルが起きない話もありますけどね。
『かみあり』における、設定の魅力
日常系作品は星の数ほどあるのでしょうが、私は日頃から日常系作品を愛好している訳ではありません。『ばくおん!!』アニメは見ているが、『けいおん!!』は見たことが無いレベル。
そんな私は、『かみあり』の設定が、非常に気に入っています。
日本人の「ごった煮」宗教観
平均的な日本人に「あなたの宗教はなんですか?」と聞いたら、口ごもる人が多いと思います。「分からない」とか、「無宗教」とか言ってしまう人もいるでしょう。
- 初詣は神社へ
- でも、寺にも初詣に行くよ
- 合格祈願は神社の方が多いかな
- ディズニーランドでは、イースターイベント(キリスト教由来)も楽しむよ
- 最近はハロウィン(古代ケルト人文化由来)も定着したよ
- 結婚式は、いろんな宗教の形式から選択するよ
- クリスマス(キリスト教由来)は目一杯騒ぐよ
- お墓は仏教式が多いかな
上記のような方は、お墓基準で「仏教徒」を自称するのが無難なようですよ。
「およそ、宗教と呼ばれる要素はなにも信じないし、祈らない」くらいでないと、「無宗教」とは名乗らない方がいいそうです。
「ごった煮」宗教の正体
この「ごった煮」を理解する中で、『日本人なら知っておきたい神道』という本が役に立ちました。- 作者: 武光誠
- 出版社/メーカー: 河出書房新社
- 発売日: 2003/06/21
- メディア: 新書
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という考え方が、非常に納得できたのです。
それ以来、私は自分の宗教観を「神道信者・仏教要素強め」くらいに捉えています。
「ごった煮」文化をさらに煮詰めた、『かみあり』の設定
『かみあり』の世界では、「神様」たちが出雲の地に集まります。では、この「神様」とは、何でしょうか。
この作品における「神様」とは、「日本人から『崇拝』されている客体、人格とみなされて思いを寄せられている客体、すべて」です。
神社で祀られているような神様たちが、もっとも主要な登場神様です。
しかし、それ以外の「神様」もたくさんいます。
なにせ日本には宗教由来のゲームやマンガ、アニメキャラが掃いて捨てるほどいるからな!!
エミちゃんによる、わかりやすい解説。
(『かみあり』第一巻より)
ゲームやマンガ由来の人格も、「想い」を集めれば「神」として顕現する。
これは乱暴なように見えて、かなり誠実な「神」の定義です。
「想いを集めれば『神』とみなす」という定義を採用しない場合、「古事記に登場するのが『神』」「聖書に登場する天使も『神』でいいよ」「あとは作者のさじ加減」などという、結局はご都合主義な設定を採用せざるを得ません。
『かみあり』の出雲では、『想い』さえ集めていれば
- みんな知ってる四聖獣(白虎・玄武・青龍・朱雀)も
- 『ドリフターズ』でも大活躍中、安倍晴明も
- ケルト神話がネタもとのゲームキャラも
- ゆりゆり天使ガブリエルちゃんも
- 17世紀魔術書に登場する悪魔も
- 2010年6月に大気圏で燃え尽き、全世界の人気者となった『彼』も
みんな、みんな、等しく「神」として現れることができるのです。
つまり、私の信じる「ごった煮宗教としての神道」そのままなのです。
教養にもなる、可愛らしい神々
神々の容姿や性格は、いろんな要素を勘案してデザインされています。- 元の伝承
- 伝統的な容姿のイメージ
- 御利益のイメージ
- 創作(小説・マンガ・アニメ)を経た「現代における」イメージ
- 作者都合による、漫画的おもしろさ
この料理の仕方が、見ていて楽しい。
「おじいちゃんが藤原鎌足」という経歴をもつ神様のキャラ付けが「おじいちゃんが総理大臣」な某ミュージシャンに寄せてあるのには、笑いました。
『かみあり』は私にとって「へー、こういう神様がいるんだー」という、出会いの場になっています。
神様が闊歩しているくせに、ほのぼのとした日常。
このアンバランスさにはまります。
ちょっぴりの教養知識とともに癒されたい方に、オススメのマンガです。
お試しあれ。
(今井士郎)
- 作者: 染屋カイコ
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