今日も元気に問答御用

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秋の夜長の『ホーリーランド』 不覚の夜更かし

徒然なるままに、漫画を語る記事です。
お役立ち情報はありません。

君は「不良(ヤンキー)狩り」の伝説を知っているか

ちょっと元気の足りない毎日が続いています。
元気が足りないときは「睡眠をとること」をとにかく頑張るべきなのですが、昨日はすっかり失敗。ベッドには入ったものの寝る踏ん切りがまるでつかず、『ホーリーランド』を前半からラストまで大人買いして読み切ってしまいました*1

すっかり夜更かしで睡眠不足ですよ……。

ホーリーランド』は森恒二先生による路上格闘マンガ。
20世紀末から21世紀序盤に連載された全18巻の作品で、元いじめられっ子、引きこもりの少年、神代ユウが、本で覚えたボクシングテクニックを軸として、下北沢や吉祥寺といった街の路上で、喧嘩自慢と実戦を繰り広げていき、『夜の街』で存在感を増していく姿を描きます。

ユウは、ストーリーが始まるまでに「カツアゲしてきた相手にパンチを繰り出して返り討ちにする」のを繰り返しており、劇中序盤ですでに「不良(ヤンキー)狩り」という二つ名を与えられています。

「とても『やる』ようには見えない」と評されるおどおどした様子でありながら何人もの不良を倒したユウは、オドオドしながらも柔道・空手・剣道といった武術修行者と戦うことを強いられていき、当初は自衛が目的だったのに対して、次第に「強くなること」を目指すようになっていく……といったストーリーです。

「ノールールでの異種格闘戦」というプロットは、さながら下ネタ抜き・ロマンましましの喧嘩商売といったところでしょうか。

「洒落にならない暴力による被害」が描写されるシーンも多少はあるのですが、基本的にはヒロイックでカタルシスのある格闘描写になっています。

ホーリーランドと言えば、『ちゆ12歳』なんだよなぁ

私が本作を知ったのは、テキストサイトバーチャルネットアイドル ちゆ12歳』でした。
Vtuberが幅を利かせる現在は、「バーチャルネットアイドル」の概念に時代が追い付いた感がありますね。

基本的には題材を小馬鹿にする感じの記事が多いサイトで、『ホーリーランド』も御多分に漏れず『ちゆ』では小馬鹿にされているのですが、読みたくはなる記事だったんですよね。
『ちゆ』で作品に触れていたのは連載も前半のころだったと思われ、私は作品の途中から、本誌でリアタイで追いかけていました。

ホーリーランドの作中では、『ちゆ』でも取り上げられていた「やけに自信満々な作者の自分語り」が、説得力のあるようなないような、不思議な空気を演出しています。

私的ベストバウトはどれだろう?

全体を一気読みした今、作品内で一番楽しかった勝負はどれかな? と考えてみました。
パッと思いついたのは、空手家「長田」との戦いですね。

ユウは「不良狩り」として名を挙げ、一度は退けた空手家・ショウゴと友情を深めていきますが、ユウの成長に焦りを感じたショウゴはユウにリターンマッチを要求します。ユウはリターンマッチをも制し、ショウゴはユウを避けるように。
するとショウゴを疎ましく思っていた、ショウゴの先輩である長田が、だまし討ちのような形でユウを空手道場に招き、不意打ちと空手のルールでユウを圧倒。
自身とショウゴの実力を長田に侮辱されたユウは、路上でリターンマッチを申し込み、今度は長田を圧倒するのだった、といったお話です。

このお話は、いくつか好きな要素があるんですよね。

まさかの、格闘マンガで「警察に行け」

空手道場で暴行を受けたユウは、メンターである「路上のカリスマ」マサキに対応を相談するのですが、マサキはユウに「警察に行けば、暴行・傷害として相手を罰してもらうことができる」と提案します。

……なんてマトモな提案なんだ……。
一方で、格闘マンガでそれを言っちゃあおしまいよ……。

ユウは実力で長田を見返したいと、その提案を拒否するのですが、登場人物が「作者の都合のいいように動かされている」のではなく「適切な思慮と意志を持って行動している」と感じさせてくれる、よい流れでした。

「降参」で勝負がつく健全さ

作中の戦いは「試合」ではないので、ルールはありません。

改めて考えると、「路上の喧嘩」って、どこまでやるのが適当か分からないんですよね。
相手を殺害すれば深刻な警察沙汰になるので、作中の不良共もまず避けようとします。
一方で「この場では勝った」レベルで相手を解放したら、リベンジに燃えた相手に、ひどい報復を食らうかもしれません。

結果として、作中の多くの戦いは、相手を「ボコボコにする」ところまで続きます。
戦意喪失しても終わるとは限らず、骨や歯を折ったりするレベルの加害が描かれるケースも割と。

ユウの周囲では、いつしか「正々堂々の試し合い」をする空気が醸成されていき、美しいノーサイドで戦いが終わるケースも増えていくのですが。
この長田戦(路上リターンマッチ)は、「正々堂々の戦い」「降参」で戦いが終わるケースの嚆矢になるのです。

長田はユウやショウゴに侮蔑的な態度を取り、だまし討ちまで仕掛けますが、最後には自分の実力が劣っていることを認めて、自分の口で降参を宣言します。
読者として、スカッとしつつ、ホッとする流れでもあったんですよね。
フィクションなのだからボッコボコになるまでやれよ、という意見も一理ありますが、私はあのくらいのバランスが好きです。

ヒロインもかわいいよ?

はい。
伊沢マイ、とてもかわいいです。
顔がよくて、スタイルがよくて、元気で、性格がよい。とても魅力的。
でも、読者には「かわいい男の子(ユウとか)」の方が人気なのかもしれません。

そんなこんなで『ホーリーランド』、今となっては古いマンガになるかもしれませんが、おススメです。
(今井士郎)

*1:無料マンガアプリ『マンガワン』で、一日一話(本来の一話をアプリ用に半分ずつに分割したもの。短い)ずつ公開されています。コツコツ読み進めていたのですが、カトー戦の途中で我慢ができずに買い始めてしまいました……。